「ジャンゴ」とは、ジプシーの言葉で「私は目覚める」という意味。
しかし、戸籍上は「ジャン・ラインハルト」となっていた。
彼は両親に連れられて馬にひかせたキャラバンに乗りヨーロッパ各地を移動していたから、国境を越えるときは戸籍上の名前が使われていた。
戸籍上の名前は偽名に近い位置にあり、国境を越えるとき外国人風の名前にすることで入国しやすいようにと考えていたようです。
そして、ジプシーであることを隠してその国にうまく紛れ込むように、旅先の国によって様々な名前を使っていたようです。
けれども、キャラバンが人里離れた泉のほとりや森の中にひっそりと停め、焚き火を囲んで料理と団らんに興じるとき、家族はいつも彼をロマニー語の名前「ジャンゴ」と呼んだ。
これはジプシーの中でも風変わりで印象的な名前だった。ジャンゴはこの名前をとても誇りに思っていた。
ジプシーにとって本当の意味があるのは戸籍名ではなく一族の間でだけ使われる愛称のほうであった。
例えば「バロ」→「大きい」とか「最初に生まれた」という意味、「チャタ」→「影」、「ズナ」→「太陽」。
「ベロ」→「熊」のように動物の名前からとる場合もある。
女の子には「ファヨラ(スミレ)」、「ドゥラカ(葡萄)」など花の名前をつけたりした。
「チャヴォロ」→「男の子」、「チョコロ」→「息子」、「チャイ」→「女の子」など性別から簡単につけられる場合もあった。
いわゆる幼児語「バブバブ」という意味にあたる「ビンバン」、「ブールー」を名前にすることもあった。
いま例えで出てきた名前だけでもいま活躍しているマヌーシュのアーティストがいるので、面白いなぁと思いました。
ジャンゴの親がよく使われる名詞や形容詞ではなく動詞の名前を選んだという点も非常に興味深いです。